2001.03.15 : 平成13年第1回定例会

【2番(中島資浩議員)】 総括質問に先立ちまして一言述べさせていただきます。

 21世紀初の前橋市議会において総括質問の機会を得ましたことは誠に光栄であり、この場に立ちまして緊張感と使命感が混在しております。去る2月18日執行されました前橋市議会議員選挙におきまして、私は地方分権時代の中で故郷前橋が希望にあふれる都市として市民の皆さんが心豊かに暮らせるよう一貫して訴えてまいりました。

 つきましては、最初の質問といたしまして、地方公共団体における最も根本的な問題であります地方分権時代における地方自治のあり方並びに前橋市におけるその状況について何点かお尋ねいたします。ことしは、新年の幕あけと同時に新しい世紀の幕あけでもありました。21世紀は地方の時代、地方分権の時代です。昨年4月、地方分権への第一歩とも言うべきいわゆる地方分権一括法が施行されました。その中には、機関委任事務の廃止等画期的な内容も盛り込まれておりますが、税財源の問題等地方にとって大変重要な課題も残されており、一定の評価は得ているものの真の地方分権にはほど遠いといった見方が大勢のようです。その背景には、権限を地方に移譲することに対する国の強い抵抗があったとされております。みずからが握っている権限をそう簡単には手放せない。人間の心理に照らし合わせると、国主導の地方分権にはおのずと限界があるように感じられます。私は、真の地方分権を実現するためには、少々荒っぽい言い方にはなりますが、地方が国から権限を奪うぐらいにならなければいけないと思います。そして、地方分権が進めば進むほど地方自治体の裁量権はふえることになり、地方自治体が国の顔色をうかがうことなく、それぞれ独自の施策を講ずることが可能となるのです。その一方で、おのずと自治体間に格差が生まれることになります。取り組んだ施策が、結果的に失敗に終わることもあるかもしれません。しかし、地方自治体がこのような環境の中に置かれることによって自治体間で競争意識が芽生え、切磋琢磨する状況が生み出され、ひいては地方自治体の真の自立と全体的なレベルアップにもつながるものと思われます。本市は、来る4月1日特例市に移行いたしますが、国や県の権限が市に移譲されてくると同時に、市の役割、責任も大きくなります。当然議会、議員の役割、責任も大きくなります。これからの地方自治は、行政、議会、議員の取り組みいかんにかかっていると言えます。そこで、質問の第1点目として、地方分権に向けての大きな流れの中で、これまでの取り組みの状況と具体的な成果についてお伺いいたします。また、それをどう評価され、そして今後さらに地方分権の推進を図っていくに当たっての基本的考え方と課題についてお尋ねいたします。

 次に、市民参加についてお伺いいたします。これからの地方自治、住民自治を考えるとき、これまでのように行政任せではなく、私たち市民も、そして企業も一緒になって、私たちの前橋をどのようなまちにしたいのかを考え、21世紀の前橋を築いていく必要があると思います。今私は、地方からの改革の一手法として、協働、いわゆるパートナーシップの促進による地方の活性化を真剣に考えております。もう既に非営利組織、いわゆるNPO、富士山クラブによる富士山の環境保全活動等市民、行政、企業の枠を超えた協働が始まっています。また、今やIT産業、ベンチャービジネスのメッカとして有名なシリコンバレーの経済再生も、地域の衰退する状況に危機感を持った地元財界人や行政マン、さらには大学人がそれぞれの組織の利益や制約から離れ、その地を愛する一市民という立場から結集し、若く元気のよい起業家を支援する仕組みをつくり出したことから始まったと言われています。協働の可能性には、はかり知れないものがあります。また、その協働の場において大変重要な役割を果たしているのが、市民、行政、企業の取りまとめ役としてのNPOの存在です。情報公開の時代となり、市民のニーズが多様化している現在、行政だけで地域経営を行うことに限界を生じ、市民参加、さらには企業参加のもとに地域経営を進めなければ、事がうまく運ばない状況となっております。昨年4月から導入された介護保険制度は、その計画段階から行政だけでなく、営利、非営利の団体、企業、そして市民の参加を前提としておりました。これは、まさしく行政自体が地域経営における行政の限界を認めたものと言えますが、またその一方で市民は行政への甘え、依存体質からの脱却を求められているのです。このような制度は、地方自治の歴史上初めての試みと言えます。その意味において介護保険制度は、高齢者福祉の世界だけでなく、地方自治のあり方そのものを一変させる可能性を秘めています。私は、地域経営における市民、行政、企業による協働を促進することが理想的な地方分権社会を構築していく上での最大のテーマであり、決め手であると確信しております。そして、一人でも多くの市民がこの協働の輪に参加すれば参加するほど、より地域は活性化すると同時に、地方からの改革も実現へと一歩一歩近づくと思うのです。そこで、質問の第2点目といたしまして、市民参加の促進についてこれまでどのように取り組まれてきたのか、そしてその具体的な成果とそれに対する評価についてお尋ねいたします。また、今後市民参加のさらなる促進を図っていくに当たっての基本的考え方と課題についてお伺いいたします。

 質問の第3点目といたしまして、行政、企業、市民活動団体による協働を促進することが地方分権社会を構築していく上で大変重要であると考えておりますが、本市ではこの協働をどのように進めていくお考えか、お聞かせください。

 以上3点についてお尋ねし、私の第1回目の質問といたします。

【総務部長(齋藤亨光)】 地方分権への取り組みの関係でありますが、分権の成果につきましては、ご質問にもありましたが、4月には新たに設けられた特例市に移行し、これにより都市計画などの権限を受け入れることになります。また、県の審査などが廃止となった事務に関し、処理期間の短縮を図るとともに、市が独自に申請等の書式を定められるようになったものに関して押印の見直しなどを行い、市民が提出する書類の簡素化に取り組んでおります。現状の成果、取り組みでは、市民が分権の成果を実感できるほどのものではないかもしれませんが、職員一人一人が分権の意義を認識し、できるところから積極的かつ地道に取り組んでいるところであります。今後の課題としましては、自己決定、自己責任が地方分権の原則であり、どのように自己決定していくのかという部分が重要で、市民参加の取り組みを通じて、これまで以上に市民本位の行政運営を図っていくことと考えております。

【市長公室長(宮地英征)】 市民参加についてでございますが、これまでの取り組みといたしましては、例えば本市の第五次総合計画を策定する際に、市民の代表に参画していただくなど、市政の各分野における審議会等々で市民の皆さんに行政に参加していただいております。最近では、都市交通問題や県庁舎・市庁舎周辺整備構想などでワークショップ方式などを取り入れております。また、牛池川や赤城白川での水辺の楽校の地域参加や大室公園での古代住居づくりなども、広い意味での市民参加になろうかと考えております。具体的な成果といたしましては、中心市街地で自主的な活動を始めたコムネットQなどのまちづくり活動や新年度予算でご審議いただいておりますコミュニティーバスについて、計画から導入実現に至るまで市民参加方式により進められているなど具体策に結びついてきております。この評価でございますが、時間がかかったり紆余曲折を経る場合もあり、一概には言えませんが、多くの市民の方々が望んでいるものについて、市民と行政等が一緒になってまちづくりに取り組めるようになってきたことではないかと思います。

 次に、今後の基本的考え方でございますが、市長も市民と歩み、市民とつくる市政を掲げておりますし、第五次前橋市総合計画のリーディングプランの中でも、市民参加まちづくりプランとして市政に参加しやすい体制づくりを進めております。今後もその時代のニーズに沿う形で促進していく必要があると感じております。

 次に、市民参加の課題でございますが、行政といたしますと、一生懸命市民の皆さんが市政に参加できるよう努力はいたしますが、基本的に参加いただくのは市民の皆さんでございます。したがいまして、どうしたらより幅広い層から自主的、積極的に参加いただけるかどうかが課題であるというふうに認識をしております。

【市民部長(大谷秋男)】 企業、NPO、ボランティア団体との協働についてでありますが、地方分権に伴って、地方では行財政改革等が進められております。一方、市民ニーズは多様化し、すべてを行政だけで対応するのは大変厳しい状況となっております。このような状況の中で、企業の社会貢献活動やNPOの活動が活発化され、市民の参加によって市民のさまざまなニーズや課題にこたえていくことは大変重要であると考えております。そこで、行政、NPO、企業が対等で平等な関係のパートナーシップを結ぶことが大切でありますし、みずから情報公開を進めることにより、お互いが理解し、情報の共有化を図ることも必要と思っております。市といたしましても、企業やNPO等が活動しやすい環境整備に向けて、今後も引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

【2番(中島資浩議員)】 ありがとうございました。質問の第1点目に対するお答えに対しまして、2点お尋ねいたします。先ほどのご答弁の中で、自己決定、自己責任が地方分権の原則であるとの発言がございましたが、その点につきましては私も全く同感であります。そこで、質問の第1点目といたしまして、施策を自己決定する過程において重要と思われる審議会の公開や審議会委員の公募、パブリックコメント制の導入等情報公開、説明責任、アカウンタビリティの取り組み状況と課題についてお尋ねいたします。

 また、質問の第2点目といたしまして、自己責任という観点において重要と思われる行政評価システムの導入等、行政評価への取り組み状況と課題についてお伺いいたします。

 以上2点についてお尋ねし、私の2回目の質問といたします。

【総務部長(齋藤亨光)】 審議会等の会議の公開及び委員の公募の関係でありますが、平成12年4月から全庁的に取り組んでおりまして、市民の方々に、委員としてご審議をいただき、またその審議状況を市民の方々にごらんいただくことで、より一層の透明性確保に努めているところであります。委員の公募につきましては、それぞれの審議会等の委嘱がえの機会に実施することとしておりますが、平成12年度は四つの審議会等で委員の公募を行ったところであります。また、ホームページや情報提供コーナーを通じて会議の開催日などの情報発信もしておりますが、今後の課題といたしましては、提供する情報の内容の充実やより多くの市民が参加していただけるよう、PR方法を工夫していく必要があると認識をしております。

 パブリックコメント制度は、幾つかの事業や計画で市民からの意見、提案を募集する試みをしておりますが、本格的な実施には至っておりません。市民参加を推進する手法の一つとして、検討課題であると認識をしております。

 次に、行政評価への取り組みでありますが、本市では平成10年度から総合計画実施事業において試行し、現在ご審議いただいている平成13年度予算から、一般財源枠配分方式の導入にあわせて、対象の事務事業の拡大を試みております。評価の単位は事務事業レベルとなっておりますが、行政評価の手法を用いることにより内部論議を活発化させ、職員の意識改革、コスト意識を高め、事業の効果的な運営につながるよう取り組んでいるところであります。今後の課題といたしましては、事業成果の指標化が難しいものの、評価方法の検討や行政の内部文書特有の表現など、市民にとってよりわかりやすいものに改善することなどが挙げられると思います。

【2番(中島資浩議員)】 ありがとうございました。以下、第3質問にかえまして何点か要望させていただきたいと思います。

 先日の平成13年度当初予算案の市長説明の中でも、市民本位の市政運営が大原則であるとのご発言がございました。私も全く同感であり、市民の皆さんの声をでき得る限り市政に反映させることが、地方自治、住民自治の大原則であると思います。市民参加の取り組みとして、審議会委員やワークショップ、ワークショップメンバー等の公募を行っているとのことでありますが、現状においてはどうしても特定の方、限られた方の参加にとどまってしまうという課題があると思います。先日東京の早稲田商店街を再生させました早稲田商店会会長である安井潤一郎さんのお話を伺う機会があったんですけども、安井さんは、これからは市民参加ではなく行政参加でなくてはならないとおっしゃっておりました。私は、これを聞いてなるほどと思ったんですけれども、NPOやボランティア団体などの市民活動団体は、行政や民間企業によるサービスなどでは自分たちの思いが満たされないがために組織されたものが多いと考えられます。つまり行政や民間企業を補完するものがNPOやボランティア団体であると言えます。そう考えますと、行政がNPOやボランティア団体などの市民活動団体との協力、支援体制を積極的に推進することによって、市民の要求はより満たされることになると思います。これこそ真の意味での市民本位の市政運営により近づいた形であると言えるのではないでしょうか。これからは、市民参加を一歩前進させた形での行政参加というものを前向きに検討いただければと思います。

 また、現在の市民参加の形態においては、市民の皆さんの声がどこまで生かされているのか、その過程がはっきりしないという問題点もあると思います。せっかく審議会やワークショップなどで市民の方々のご意見を伺っても、それが余り市政に反映されていないのでは、形ばかりの市民参加になってしまいます。昨年夏、前橋市と高崎市の連携事業として夢事業というものがあったと思いますが、これはたしか前橋市民と高崎市民が力を合わせて実現できるかもしれない、こういった事業を募集したものであったと記憶しております。これには、約50件ほどの応募があったとのことでありますが、現在それぞれに対する回答をすべく準備をしているところであるとのことでした。しかし、市民参加の市政運営という観点に立つのであれば、市民の参加のもとでそれぞれの意見に対して検討する場を設け、これはというものがあれば実現に向けて動き出すというようなことがあってもよいのではないかなと思います。実のある市民参加となりますよう、またでき得る限り市民の貴重な意見を無にせぬよう、切にお願いをいたします。

 最後に、21世紀地方分権の時代において、前橋市が群馬県の地方自治体の雄としてほかの市町村の牽引役となりますことを期待いたしまして、私の総括質問を終わります。ありがとうございました。

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