2010.12.10 : 平成22年第4回定例会(第4日目)

【20番(中島資浩議員)】 皆さん、おはようございます。まず初めに、旧麻屋ビルについてお尋ねいたします。
 私が本年3月の第1回定例会総括質問において、8番街の整備に当たっては旧麻屋ビルの景観を生かし、本市中心市街地再生のシンボル、ランドマークとして整備すべきとの観点から市の見解を伺いましたところ、全国的に見ても大正、昭和初期に建造された鉄筋コンクリート造の商業施設として希少価値の高い貴重な近代構造物であり、現在国の登録有形文化財に指定されている。この建物は、前橋市にとりましても中心商店街の商業と歴史のシンボルであり、保存、活用することにより中心市街地活性化の拠点になり得るものと考えている。今後も引き続き所有者等と協議、調整を進めながら旧麻屋ビルの利活用について検討し、8番街区での一体的整備を図ってまいりたいとの大変前向きなご答弁をいただき、安堵したところであります。ところが、わずか半年後の10月28日、担当部長から所有者が解体後更地で土地開発公社が先行取得することとなったとの報告があり、一瞬耳を疑いました。なぜわずか半年余りで市民に向け発信した本会議での答弁内容が180度変わってしまうのか、まず解体の理由についてお聞かせいただきたいと思います。

【都市計画部長(塚田昌志)】 所有者の方から市への売却のお話がありまして、その後教育委員会、関係部署とともに全庁的に保存、利活用に向けた協議を重ねてまいりました。当該建物は、竣工より76年を経て鉄筋コンクリート造の耐用年数を大幅に経過しているなど経年劣化が進んでいること、階段等の内部改修が行われ、不安定な状況と……
(何事か声あり)

【議長(岡田修一議員)】 静粛に願います。

【都市計画部長(塚田昌志)】 なっていること、外壁のタイルやモルタルの剥離が著しく、剥落の危険性もあるなど今後の保護に耐えられない状況にあります。また、建物を保存し、利活用を図るためには耐震補強や内外装、その他電気設備や給排水設備等の建物全体の大規模改修が必要となり、多額の経費を要するばかりでなく、活用する場合の制約もあることなど総合的に勘案した結果、大変残念なことでありますが、市所有による保存、利活用は行わないという結論に至ったものでございます。

【20番(中島資浩議員)】 全く理解に苦しむところでございます。耐用年数を過ぎているという話もございましたけれども、今のこの技術の進歩した時代、確かにお金はかかるかもしれませんけれども、先ほど申し上げたような答弁からいたしますと、それだけのお金をかけても十分残すべきものであると私は認識しております。いずれにいたしましてもこの3月議会の答弁からも私はこれはまさに議会軽視ではないかというふうに考えております。議会における答弁の重みについてどのようにお考えなのかお聞かせください。

【都市計画部長(塚田昌志)】 議会における質疑は、市民の声を代表する極めて重要なものと認識しております。また、その答弁においても信頼性を持った真摯な対応を念頭に置いているところでございます。3月議会での答弁は、建物所有者において保存、利活用することを前提としたもので、所有者等と協議、調整を進めながら旧麻屋ビルの利活用について検討し、8番街区での一体的整備を図っていきたいとするものでございました。その後所有者での保存、利活用ができなくなったことにより本市に保存、利活用を希望され、本市での保存、利活用について検討し、建物の保存状態や改修経費、活用面での課題など総合的に判断した結果、市による保存、利活用は行わないということに至ったもので、状況の変化に対応したものでございますので、議会答弁の信頼性を欠くものではないものと考えております。

【20番(中島資浩議員)】 先ほどの答弁ですと、所有者みずからの保存を前提としたものだったということでございますが、それはともかく、先ほど申し上げた3月答弁における麻屋ビルについての評価からいたしますと、そのことと私は別なことだというふうにとらえております。先ほど述べましたとおり、旧麻屋ビルは国の登録有形文化財に指定されておりました。3月の議会答弁では、市としても旧麻屋ビルの文化的価値を高く評価していたと思います。にもかかわらず、なぜ壊すという結論に至ったのか、全く理解ができません。改めて旧麻屋ビルの文化財としての評価について、文化財保護課を所管する教育委員会管理部長のご答弁をお願いしたいと思います。

【管理部長(戸塚良明)】 旧麻屋ビルにつきましては、昭和9年に建設をされました昭和初期の建築様式をよくとどめている県内でも数少ない鉄筋コンクリートづくりの商業建物で、昭和20年8月の前橋空襲の惨禍をくぐり抜けた前橋市民の記憶に残る歴史的建物として認識をしております。

【20番(中島資浩議員)】 今ご答弁いただいたそのとおりだと私も思います。私は、このたびの旧麻屋ビルについての方針転換を知り得た10月半ばからこれまでの間幾度か所有者にお会いいたしまして、意向を伺ってまいりました。そこでわかったことは、本心では今でも保存と活用を望んでいるということであります。にもかかわらず、その所有者がみずから国の登録有形文化財の登録を抹消し、解体しなければならないと、こういった大変不本意な状況に及んだわけであります。そのため所有者は、一たんは市と大筋で合意しつつも約1カ月余りの間まさに悩みに悩み抜き、苦渋の決断を下すまでに時間を要したものと思われます。一方、8番街に関する具体的な計画は今のところ白紙とのことであります。それならば、当該建造物の歴史的価値を認めた3月議会並びに先ほどの答弁内容からも解体をなぜ急ぐのか甚だ疑問であります。所有者も市で取得し、取得後に8番街のあり方に関する市民参加の検討委員会を立ち上げてもらい、その中で旧麻屋ビルの保存と活用の是非についても検討の上、答えを出していただくのが理想と明確に言っておりました。それがまさに市長の目指す市民力を生かしたまちづくりではないでしょうか。契約以前、所有者から数回にわたり市長あての手紙を出されているようでありますが、これを受け、市長ご自身が所有者のもとを訪れ、話をされたということであります。ご案内のとおり旧麻屋ビルの建物は昭和9年、創業者によって札幌三越の建物を参考にし、同建物並びに現存する銀座松屋を建設した木田組が現存する旧麻屋ビル本館を建造。以来創業者の意を酌み、歴代の当主が時代の厳しい経済環境にも耐え、いつかは市民の文化遺産としてよみがえる日を夢見て大切に維持されたものであります。また、1980年、日本建築学会編、新版日本近代建築総覧、各地に遺る明治大正昭和の建物の中で1860年代から1945年に至る間の日本の近体建築で現存する主要なもののリストにも掲載をされ、将来にわたって保存すべき歴史的建造物として建築学会で評価されております。市長ご自身、旧麻屋ビルの保存と活用に向けて頑張ってこられた所有者の並々ならぬ思いを十分ご理解のことと思います。また、新聞紙上で市民の一人は、取り壊しは市民の心を壊すと、それも同然と表現をしておりますが、同様に心を痛める市民も数多いことと思います。そこで、保存に向け、再検討の余地がおありかどうか、市長の大英断を期待するところでありますが、現在の市長の率直なお考えをお伺いいたします。

【市長(高木政夫)】 中島議員の旧麻屋ビルについての保存に対する今ご質問も、ご意見も伺っておりました。この麻屋ビルについては、長い歴史があります。また、8番街区につきましても長い歴史があるわけであります。私どもの先輩方があの8番街区の再開発に着手をした。麻屋さんの先代も最初はその再開発に賛成でなかった。いろんな経過を経て再開発に取り組み、その代表的な立場に先代は立たれた。その後ああいった事故がございまして、現在の後継者につきましてもいろんな思いの中で今日を迎えたことと思います。もちろん私は、市長に就任してから今日まで8番街区の再開発について関係皆さん方とともにいろんな思いを持ちながら検討もしてまいりました。現在の所有者についても率直な意見交換もさせていただきながら今日に至ったわけであります。物事にはいろんな考え方もありますし、また結果についてはいろんな原因があることはご案内のとおりであります。私自身としても手塚さんの、所有者の思いをしっかり受けとめさせていただいてベターな方向にともに歩もうというようなことでこの麻屋を現存のまま残すということが本当に中心街、さらにはこの前橋市、市民、こういったものにとってベストなのかといったら、いろんな意見を伺う中で厳しい。所有者の現在の考えも、そういう意味では過日も2人で話をさせていただきましたけれども、今中島議員からお話をいただいたようなことももちろん心の中で思い、言葉にも出ます。さらには、それを乗り越えて新たな中心街の活性化に役に立つ再開発を期待をする、また望む、そういう思いも言葉の中にあります。いろんなことを悩み、またはそれを乗り越えていかなければ新たなスタート地点に立てない、こういう思いの中で所有者が重い決断をされた。私もその決断には相談に乗らせていただいたり、ともに悩んでお互いにその方向を目指そうということでこういう結論に至ったわけであります。急いでこういう話が出たというようなことではありません。長い間あの8番街区が懸案となっていたこと、さらにはいろんな紆余曲折の中で今日を迎えたこと、また中心街がいろんな面でこの議会でもお話をいただいているように、なかなか全国的にどこの中心街も厳しい状況にあると、いろんな要素を考え、またはそういう状況の中で私は最大限の努力をし、お互いに納得をする結論に至った。中島議員さんにもいろんな面でご協力をいただいたわけでありますけれども、本人ともお話をいただいたことと思いますので、そういう点では私と同じようにあの重い決断に対してご理解をいただいているというふうに私は思います。
 ですから、3月議会での答弁についていろんな見方と今ご意見もいただいておりますけれども、我々も真摯に議会の質問に対して、またその趣旨をよく理解して答えてきたつもりであります。決して議会を軽視したり、180度勝手に変えてきた、そういう思いではありません。これは、お話をいただいた中島議員さん自身もよくわかっていらっしゃると思いますけれども、ぜひそういう点ではご理解をいただきたい。この問題には、いろんな現況があるんです。厳しい現在の経済情勢や社会情勢、さらには中心街の置かれている厳しさ、そういうものをしっかりお互いに理解をし合って次の段階へ進まなければ、ここで時間を停止するわけにはいかない。もうこの8番街区が課題になってから長い時間を要してきたわけであります。ようやくここで新たな方向に向かって、お話にありましたように8番街区の整備に対する具体的な方向も出さずに、これを知恵を出してスピーディーに具体化をしていくということが私は34万市民が望んでいる前橋市の中心街の再生のスタートになる、こういうふうに考えておりますので、ご意見もごもっともな内容もありますけれども、我々もそれを乗り越えて所有者も決断をされたことを重く受けとめてしっかりこの再生に向かってのスタートを切りたい、こう考えております。

【20番(中島資浩議員)】 ご答弁を市長にいただきましたけれども、どうしても私としてはあきらめ切れません。所有者を責めるつもりは全くございません。あくまで市が先ほどおっしゃったような価値を認めていらっしゃるのであれば、何とかとりあえずそのまま壊さずに残して、8番街の検討の中であわせてその存続あるいは利活用の是非、こういったことも検討していただきたいというのが私の強い願いでございます。いずれにしてもまことに残念としか言いようがございません。またこれで中心市街地再活性化への糸口を1つ失ってしまったということになります。8番街にどんなに立派な新しい建物を建てても、ほかのまちとの違いというのはなかなか表現できません。すなわち、歴史ある風格とデザイン性を有する旧麻屋ビルの存在価値はほかに比類のないものであるというふうに考えております。それは、郊外店や他都市との差別化につながり、当然前橋のまちの魅力にもつながると考えております。そして、旧麻屋ビルは戦前から戦後にわたる前橋の歴史の語り部であり、市民の心のランドマークでもありました。こういった重要な歴史的資産を残すべきか否かの価値基準を単に費用対効果に求めるのは余りにも短絡的であり、不毛な文化行政にもなりかねないというふうに考えております。そして、これが精神性の極めて希薄な市民社会の形成につながることが大変危惧されるところでございます。もうこれ以上質問はいたしませんが、この機会に今後の文化行政のあり方、ぜひこういった視点に立って前向きな取り組みを強く要望しておきたいと思います。

【議長(岡田修一議員)】 市長。

【20番(中島資浩議員)】 市長、特に答弁は結構でございますので、次の質問がございまして……
(何事か声あり)

【議長(岡田修一議員)】 市長、待ってください。質問していないですよね。

【20番(中島資浩議員)】 1つ質問させていただきます。時間の関係がございますので、これが最後の質問になるかもしれませんが、そのご答弁をいただいた後にもし時間がございましたら、恐れ入りますが、市長にご答弁をいただきたいと思っております。

【議長(岡田修一議員)】 一問一答ですから。

【20番(中島資浩議員)】 はい。
 小中学校等普通教室への空調設備設置についてお伺いをいたします。地球温暖化に伴う猛暑に保護者を初めとする多くの方々から小中学校へのエアコンの設置を望む声が寄せられております。熱中症が多発する中で勉学環境の改善は児童生徒の健康管理上からもかねてその必要性を強く感じていたところでありますが、今回の対応は大変適切であると考えております。しかし、内容的には普通教室のみへの対応とのことであり、理科室等特別教室についてもぜひ同様の措置を講じる必要があると思いますけれども、ご所見をお伺いいたします。

【管理部長(戸塚良明)】 今回エアコンを設置する予定がない教室といたしましては、理科室、図工室、家庭科室等の特別教室がありますが、設置につきましては普通教室への導入状況を見てから検討してまいりたいと思っております。

【20番(中島資浩議員)】 それでは、市長にご答弁いただければありがたいと思いますが、よろしくお願いします。

【市長(高木政夫)】 旧麻屋さんのビルについては、価値を認めていないわけではないんです。価値を認めた上で我々としてもいろんな検討を重ねてきたんです。それは、部長から答弁をさせていただいたように、価値を認め、利活用が可能かどうか、また利活用することが中心街のために、また今中島議員からいろんなお話をいただきましたけれども、そういうことも含めて検討して総合的な判断の中でこのような決断に至ったのである。全く価値を認めなかったり、無視をしたり、そういうことではない。我々は価値を認め、できるならば利活用をしたいと。しかし、そういう利活用の検討の結果、総合的に現時点では厳しい。本人も重い決断をされた。私自身も本人と同じように重い決断をしたということをご理解いただきたいと思います。

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