2006.03.02 : 本会議一般質問

 2006年3月2日、初めて本会議での「一般質問」を行い、県民皆様の声を、しっかり県政にお届けしました。持ち時間59分の中で、知事・教育長・各理事より答弁を得ました。質疑応答の概要は、以下の通りです。
 また、当日は、大変多くの皆様に傍聴にお越し頂き、大変励みになりました。心より御礼申し上げます。

【1】行財政改革について

●県債残高

 平成18年度末県債残高見込額9,614億円余をどう認識されているか。

 <知事>大きな債務残高と思う。平成6年度末は4,583億円であったが、その後、何度かにわたる国の経済対策に連動し、公共事業を中心に積極的に財政出動を行った結果である。群馬県は他見に比べ少ない方だが、なるべく少なくして行きたい。

 率直に言って、1兆円に近い借金となれば、県民は不安を抱く。私たちの子どもや孫の世代に「重いツケを残さない」との強い姿勢が必要。これについて、基本的な考え方と今後の見通しはどうか。

 <知事>そういう気持ちで取り組んでいる。上程中の予算案でも県債を減らしている。これをもっと下げるには、公共事業を下げればいいが、経済に対する影響もあり、社会資本の蓄積や災害対策上の問題もあるので急激に減らせない。バランスが難しいが、何とかいいハンドリングでやりたい。

【要 望】 県民の負担軽減には、抜本的な行政改革の断行による小さな県の実現が急務。民間のシンクタンクが提唱する「事業仕分け」が、今全国的に注目されている。県の事業を徹底的に洗い直し、真に必要か否かを見極め、必要であれば「官」か「民」か、官の場合、国・県・市町村のいずれが行うべきかを再認識するべきである。この手法は、全国の9県6市で実施し、「不要」、或いは「民間委託」と仕分けされた事業が全体の約1割に上り、予算の大幅な削減が見込まれていると聞くが、この手法の導入について、検討方を要望したい。

 

【2】個性を生かした県づくりについて

 厳しい財政状況下、限られた貴重な財源のより効果的活用を前提に、知事は“選択と集中”に掲げている。このキーワードで、魅力ある県づくりを積極的に展開して行くには、本県の個性を最大限に生かすことが最も近道であり、厳しい都道府県間競争に打ち勝つ決め手と考えられているが、この観点から次の2点について伺いたい。

●群馬交響楽団

 群馬交響楽団は今月、創立60周年を迎えた。大都市を除き、地方都市では全国的に珍しく、群馬県民共有の財産であり、末永く存続する必要があると思われるが、知事の群馬交響楽団に対する基本姿勢を伺いたい。

 <知事>群馬交響楽団は、戦後間もなく高崎市民有志が立ち上り、日本を文化の力で再興しようと尊い理念のもとに発足したが、昭和50年代に入り経営が行き詰ってきた。独立した民間法人であり、国・県などの公的助成は行っていたが、その後、全県的なバックアップの要請が出てきた。外国の有名オーケストラも6〜7割は公的支援があり、みんなの共有財産として考えている。移動音楽教室で、子どもたちがクラシック音楽を生のフルオーケストラ演奏で聴ける得がたいものがあり、公的支援の対象になるべきという考え方である。

 群馬交響楽団について、深いご理解を頂きありがたい。群馬音楽センターは築44年が経過し、“第2の楽器”と言われるホールとしては、音響面で厳しい状況にある。創立60周年を機に、本県が誇る群馬交響楽団の更なる飛躍・発展のためにも、フランチャイズホールの建設が待望されているが、所見を伺いたい。

 <知事>群馬音楽センターの音響効果については、よく言われている。会場が非常に大事であることは承知している。「いい施設が欲しい」という声は聞いていて、私もそのように思っている。また、その方向で近くやってみたい気持ちは十分あるが、大切なのは、市民からのたくましい気運の盛り上がりだ。根底にそういう精神性がなければ、ただ単に税金を投入して造っただけのことになる。私も前向きに考えている。

【要 望】 平成17年度文化行政懇談会報告書によると、群馬交響楽団を文化のシンボルとして存続して行くうえで、企画営業・事務局体制・音楽の提供等それぞれの面で、相当な危機感を持った提言をしている。文化事業は採算ベースに乗せるには難しく、加えて、地方都市では一層難しくなるので、群馬交響楽団に対し心温かなご支援をお願いしたい。

 

●歴史的建造物の保存と活用

 群馬県近代化遺産総合調査報告書によると、国の登録文化遺産として登録された件数は全部で136件、うち現存するものが122件、このうち国指定と登録が20件、県指定が7件、滅失が14件とのことである。
 この調査は、失われつつある近代化遺産を残して行くために行われたとされているが、その一方で、登録件数136件のうち既に14件が失われていたことは誠に残念である。今こそ、保存に向け所有者等へのバックアップに積極的かつ計画的に取り組むべきと考えるが所見を伺いたい。

 <教育長>個人の所有物がほとんどで、保存上の前提用件としては所有者の協力が欠かせない。また、当然地域の支援も必要だ。県も、調査や連絡、調整の点でできる限り積極的に支援して行きたい。

【要 望】 現在、旧官営富岡製糸場の世界遺産登録に向けた取り組みがなされているが、こういったメジャーなものだけでなく、県内各地域に点在する小規模な遺産にも、もう一度目を向けてもらいたい。また、財政的な問題も含めて、遺産が失われることのないよう、一歩踏み込んだ支援体制を考えられたい。

 

【3】「子どもを育てるなら群馬県」の更なる推進について

●空き教室の活用

 昨今、子どもたちを巡る様々な問題が生じている。要因の1つに、核家族化により、子どもたちが日常的にお年寄りと触れ合う機会が少なくなったことが考えられる。社会環境の変化から、これに歯止めがかけられない。より現実的な対応策として、小学校の余裕教室を、先ず地域のお年寄りが集まる空間として提供してはどうか。子どもたちがお年寄りと触れ合う中で、情操的な環境が生じ、いたわりの心が育まれるなど、相乗効果と核家族化のマイナス要素の解消に、大いに期待が持てると考える。小学校地区単位の“小さな自治”を提唱する知事に所見を伺う。

 <知事>子どもの頃を思い出すと、必ず桜の木がある小学校の風景を思い出す。小学校は、みんな丁度よい距離にあり、運動広場もあり、親しみやすい教室もある。私は是非そういうものを活用すべきと思う。近所のお年寄り、お父さん、お母さん、子どもたち・・・。年齢、性別を問わず集まるような場所にする。みんなが集まれば、治安もよくなる。是非、教室でも、体育館でも、運動場でも、使ったらいいと思う。平成16年度からそういうものを活用し、学校支援センターをボランティアの協力を得てやっているが、私はもともとその様に思っており、そういった中に「自治」というものが育まれればいいと思う。

【要 望】 空き教室の活用は、お年寄りと子どもたちの触れ合いによる情操教育の場として、また、地域コミュニティー醸成の場として大変有効と思われるので、前向きな検討を、是非、宜しくお願いしたい。

 

●少子化問題

 少子化の要因をどう捉えているか伺う。

 <保健・福祉・食品担当理事>子どもを産むことに対する躊躇の要因は、(1)出産後も働き続けることの難しさ、(2)子育てに伴う経済的負担が大、(3)核家族化による子育て家庭の孤立化、(4)将来への漠然とした不安感、このように捉えている。また、少子化そのものについては、未婚化・晩婚化なども一般的な見方である。

●待機児童の受入体制の見直しと整備

 要は、それをどう克服するかが少子化対策であり、県も様々な取り組みを行っていると思う。一方、出生率の減少に歯止めがかからないことに、問題解決の難しさがある。以下、具体的な事例についてお尋ねしたい。先ず、県内待機児童の現状について伺いたい。

 <保健・福祉・食品担当理事>保育所の待機児童は、平成17年4月1日現在86人、10月1日現在111人となっている。

 待機児童は、年度当初に比べ増加傾向にある。乳幼児を抱える女性が、就職が決まっても保育園の受入先が決まらないケースが多々あるようだ。特に、年度中途での入園の場合、大変な様子。働くお母さんを応援する意味で、受入体制の見直しと整備が必要と思うが所見を伺いたい。

 <保健・福祉・食品担当理事>ご指摘のとおりである。平成17年4月1日現在、本県の保育所の定員3万7594人に対し、4万328人入所しており、入所率は104.7%である。定員は、施設整備をしない限り増えないので、施設整備にも力を入れたい。年度中途では、定員の弾力化により何とか賄いきるよう努力をしている。また、国で不採択としたものを、9月補正で県が整備を認める独自の政策を進め、積極的な対応を図っている。

【要 望】 増員等により、前向きな対応を進めて頂きありがたい。ただ、抜本的な対策には至っていないと思われる。今、保育所の民営化についての話もある。民営化も必要かと思うが、経営面で「民」では対応しきれないものもあり、正にここは「官」の出番と考える。是非、十分な検討を頂きたい。

 

●病時保育の体制整備

 風邪をひいた子どもは預かってもらえないと、勤めを持つお母さんが困っているケースがある。病時保育施設は予約制、急な対応は難しい現状にある。体制整備について所見を伺いたい。

 <保健・福祉・食品担当理事>ご指摘のとおりかと思う。今まで病時保育については、病院か診療所限定とされていたが、来年度から厚生労働省が運用基準を緩和し、病時保育を保育所でもできる見通しである。県もその方向に沿って保育所側に働きかけたい。

【要 望】 “子どもを産みたい”と思っても、様々な問題に直面し産めないことは最も不幸なこと。その問題解消こそが、少子化対策として重要と考える。子どもを産みたい人が、安心して子どもを産むことができる環境づくりに積極的に取り組まれたい。

 

【4】ハンディのある子どもたちを巡る教育環境整備について

 ハンディを持つ子どもたちの多くは、特殊学級か養護学校のいずれかに進む。これが返って、差別や偏見につながるように思える。ハンディの程度にもよるが、保護者の希望があれば普通学級で受入れることができないか。これにより、ハンディを持つ友達へのいたわりの心が子どもたちに培われ、ノーマライゼーション社会構築への近道と考えるが、教育長の所見を伺いたい。

 <教育長>障害のある子どもの就学については、障害の種類や特性に応じ適切な指導、就学が必要。現在、障害の種類や程度によっては、通常の学級に在籍しながら、特別の指導受ける“通級指導教室”が設けられている。ノーマライゼーションの推進上、児童・生徒との交流が大変重要である。例として、榛名養護学校の沼田分校は、例えば音楽の時間には隣り合う普通学校の教室を使う、或いは運動会を一緒に行うなど、日常的な交流を進めている。

 養護学校の修学旅行に保護者が同行できない場合、子どもたちが参加できないケースがあると側聞しているが、サポート体制を整え、修学旅行に加われるよう配慮すべきと考えるが所見を伺いたい。

 <教育長>障害の程度により、修学旅行の費用については、特殊教育就学奨励費というものが支給されている。これは、保護者以外が付き添う場合、児童・生徒の実態に応じて適切な対応が必要であるので、その諸費用が支給されることになっている。

 

●肢体不自由児の保護者負担軽減

 肢体の不自由な人が通う学校は、県内2ヶ所である。中には、遠距離通学を余儀なくされ、日々の送迎等に大変な時間と労力を費やすなど、保護者の負担は重い。何らかのサポート体制の整備が必要と思われるが、お考えを伺いたい。

 <教育長>肢体不自由の養護学校等については、例えば、寄宿舎・スクールバスなど、通学負担の軽減を図っている。また、通学上の負担等の現状を調査している。軽減対策について、総合的な観点から現在検討を進めている。

●教職員の特殊教育に係る免許取得

 特殊教育に係る免許状の取得率について伺いたい。

 <教育長>免許状の取得率は、全国平均が60%弱のところ、本県は45%である。この状況を重く捉え、認定講習会等を実施する中で、平成17年5月1日現在、保有率は約50%までに達した。更に今後これを継続して行く。

 免許の取得は最低限のこと。しかし、免許がある・なしに関わらず、特殊教育は思いやりをもって取り組むことが大事。ハンディのある子どもたちの教育にあたる教職員の皆さんは、重大な使命を担っている。人事にあたっては、温かなやさしい心を持ち、情熱をも兼ね備えるなど資質について十分な配慮を行い、優秀な人材の配置が必要と思われるが所見を伺いたい。

 <教育長>誠におっしゃるとおり。単に特殊教育だけの問題でない。教師全般に関することである。いろんな面から、教職員の資質向上を図っている。

 

【5】ハンディのある方への福祉対策について

 県単独事業のハンディのある児童の放課後活動を支援する「集団活動訓練事業」は、事業自体は大変好評だが、委託先では委託費が余りに少なく、大分苦労しているようである。この原因は、ハンディの程度に関わらず、人件費部分が一律7.5人に1人の積算にあると思われる。これではマンツーマンの対応を要する、重いハンディを持つ子どもをお世話するには当然運営は厳しくなる。ハンディの程度に応じた予算手当が必要と思われるがいかがか。

 <保健・福祉・食品担当理事>配置基準は児童デイサービスセンターの基準に準じているので、ご指摘のとおり非常に統一的なやり方のように思う。ただ、平成18年度、児童デイサービス施設についても10月以降改正が検討されており、見直しが必要と考えている。運用幅はご指摘のとおりできるが、若干問題があるように思っている。

●自立支援法の施行

 自立支援法の施行について、現時点で予算配分など詳しい数字が掴めないとのことであるが、いずれにしても、施設ではサービスの質を保つためには、身体的にも知的にも重いハンディを持つ人については、その程度に応じた加算がどうしても必要となる。例えば、横浜市では利用者1人につき7万5000円の加算があり、これでようやく運営が保たれている。この点について所見を伺いたい。

 <保健・福祉・食品担当理事>横浜市の加算は承知している。新法における障害の程度による加算の有無については、詳細が示されていない。今後、詳細を見たうえで検討したい。

【要 望】 知事は、平成18年度予算の5つの柱の1つに「弱者を守る」をキーワードとしている。是非ともハンディのある人々に対する更なる施策の充実強化にご尽力頂きたい。

 

【5】中心市街地問題について

 県都前橋の中心市街地の衰退は、大変深刻な状況にある。これをどう受け止めているか伺いたい。

 <知事>シャッターが閉まり、空き店舗が多くなる中で、細々と一生懸命苦労している商店を見ると、本当に複雑な思いがし、この街を何とかしたいと思う。街の衰退に影響しているのは、車社会だと考える。車を利用するものにとって、どういうところで買い物をし、どういうところで食べるかということが、この街の形態を変えたのではないか。確かに、中心街にないものが郊外店では売っている。こういうことが1つと、最近マンションが中心部に建ってきているが、これも微妙にこれから影響を与えてくるかもしれない。旧市街地の中で広瀬川のほとりとか、駅の南も非常に発展しているところがあるが、点在していて集中していなところに原因があるのでは。それをよく研究し、あまり悲観的に考えずに、どういう風にもっていったらいいか市ともよく協力し、また商工会議所などともよく相談しながら、活性化施策を打ち出して行きたい。

【要 望】 この問題は、今後更に議論して行きたい。県政の各般にわたり、質問を行った。県民は心温かな県政に大変期待しているので、質問事項・要望等については、その実現について特段のご配慮を改めてお願いしたい。

 


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